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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)613号 判決

被控訴人 大洋信用金庫

理由

当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を斟酌しても、被控訴人の本訴請求は相当であると判断するものであるが、その理由は原判決がその理由において説明するところと同一であるから、右説明を引用するほか、次のとおり付加説明する。

甲第一号証(同号証中控訴人名下の印影が控訴人の印章によつて顕出されたものであることは当事者間に争いがない。)、原審および当審証人佐々木進、当審証人植松俊弥および同柳原重雄の各証言並びに当審における控訴人本人尋問の結果(但し柳原証人の証言および控訴人本人尋問の結果のうち後記措信しない部分を除く。)を総合すると、控訴人と訴外柳原重雄とは所謂幼馴染として親密な友人関係にあつたこと、右柳原は、昭和四四年頃から東喜という名称で金融業を営んでいたが、同人は外国人であるため、不動産担保による貸付をする際には、同人の依頼によつて控訴人が名義上担保権者となることがしばしばあり、そのような関係で控訴人は柳原経営の右東喜の事務所に出入することも少なくなかつたこと、その頃自己の事業経営につき何かと右柳原の指導を受けていた訴外明興石油有限会社(以下明興石油という。)の代表者である訴外佐々木進も、右柳原の事務所で控訴人と顔を合わせる機会があつて、控訴人と知合うようになり、明興石油が被控訴人以外の他の金融機関から借入するについて控訴人に連帯保証を依頼したことがあること、昭和四四年四月一四日頃、右佐々木は、明興石油が被控訴人との間において元本極度額金三〇〇万円、損害金日歩金六銭なる約定のもとに証書貸付、手形貸付、手形割引等の金融取引をなすに当り、柳原の事務所において、右取引契約から生ずる明興石油の債務について控訴人の連帯保証を依頼し、控訴人の承諾のもとに甲第一号証(取引約定書)のなかの連帯保証人欄における控訴人名義の記名および押印がなされたこと、およそ以上の事実が認められる。当審証人柳原重雄の証言および当審における控訴人本人尋問の結果のうち右認定と抵触する部分は、原審および当審における証人佐々木進並びに当審証人植松俊弥の各証言と対比してたやすく措置し難く、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。以上の認定の事実によれば、甲第一号証中の控訴人名義の記名および押印が控訴人自身によつてなされたことの確証はないとしても、右記名押印は控訴人の意思に基いてなされたものと認めるべく、従つて控訴人は右取引約定書の定めるところに従つて、連帯保証人としての義務を負うものというべきである。

よつて原判決は相当であるから、民事訴訟法第三八四条第一項の規定によつて本件控訴はこれを棄却。

(裁判長裁判官 平賀健太 裁判官 安達昌彦 後藤文彦)

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